対策1『マスクカーが運ぶ』

 いつか大した憂いもなく、無事で自由な世の中になって、この記録を読む時、私自身を含めて、読む人はどう感じるのだろうかと思います。
 2019年末から騒がれだしたウィルス。最初は防備のマスクやアルコールさえ手に入らず、人とのコミュニケーション機会を絞り、ワクチン接種のハガキを郵便受けに発見しては、ついにこれでやっと心配事から開放される!と信じたものです。

実際12月に福岡の感染者数「きょうはゼロ!」という数字を見て、半年間延期となった発表会(2022年1月)も「今度こそ安泰」と思いきや、年明けからまたじわじわと新しい波が「安心させぬぞ」と言わんばかりに押し寄せ…。
2022年の1/5~1/8の三日間を例にとれば、五倍の感染者の急増。つのる恐怖感。
だけれど、発表会の主催者として憂鬱になる間などはありません。

 これまで数カ月間、さんざん時間をかけてまとめ、とっくのとうに出演者家庭に配布、周知されている内容に対して、新たに手を加える徒労…。だけれど、よろしくない事態発生を1%でも減らせればと方策を加えては、まとめては、また迷い…と、睡眠時間を削り、練り直しを黙々と続けることだけが、主催者としていくらか気が落ち着くという、全く奇異な本番直前の数日間でした。
元の予定通りのやり方を通す方が、むしろ度胸が要る、その強さは自分にはないと判断したわけです。
三日前から詳細変更計画…

(※ココヨリ文章ハ「敬体」カラ「常体」ヘ変更)

では変更内容をざっと (↑は良くなったこと ↓は教室にはダメージ )
・上の画像のごとく…。
会を二部制に分割して(↓)、比較的短時間の滞在に絞れる一方で、一音楽教室だけでの開催に800名ホールは、座席余裕だけはOKなので全て見ることも良し(↑)とする、 しかしこれらの時間的な変更により、午前中リハーサルを中止に(↓)

・感染対策要員に係を3人をあてる↑(会運営としては痛い…↓)

・プログラムの印刷しなおし(↓)みんなの持っているプログラムは無用の長物に…

・ステージ出場方法を、客席からに変更(↑ 舞台脇からの出場は、控え口が混み合う。舞台までのストロークを節約し、ご家族と一緒の席からダイレクトに行き戻りの方が利点が多い)

・マスク運び by manpower ↑のはず (こだわりたかった)
「声を出さぬピアノ演奏でのマスクなし」は、元々、会場側から禁止を受けてはいなかったこともあり、マスク有無は演奏者や各家庭の自由とした。
基本は自然な呼吸で演奏させてあげたい、マスクを口にあてている演奏姿はやはり異様なものとして目に映る、本来の晴れ晴れとした姿を記録に残す選択を残したい。
 とはいえ、客席ではマスクは大原則なので、演奏者が舞台に上がる寸前でマスクを外し、舞台から降りた途端にマスク着用の方法を考えてみる。
「ステージに出る下手(シモテ)の階段元で、外したマスクをお家の人が預かり、演奏終了後に降りてくる上手(カミテ)の階段近くへ、すっと移動していただき、マスクを渡す方法をとります」と、本番前夜に全員へ通達したものの…、それでは我が子の演奏時なのに、一番聴きたい保護者へ慌ただしい移動を強制してしまうことになる…。
 そこで本番前の夜、コトコトと制作を始めることに。
その名もマスクカー。
箱の蓋を本体の底にセット。これにはキャスターがついており、箱と蓋の間に紐を挟んだ。

写真では既にボックスから紐を取り除いてしまっているが、上のアヒルちゃんのようなイメージの、前後どちらにも動く仕上げである。

 係が紐を引っ張れば、舞台下手と上手間を、そのマスクカーが行ったり来たりする仕組み!そうだ、それが良い!
「また馬鹿なことをやりだした…」と家族が笑う。
手はずはこうだ。マスクをした演奏者が、ステージへの階段を上る直前で、自分で用意した封筒にマスクを入れ、マスクカーの箱に置く。演奏中、マスクは両方に居る係により、コロコロと上手(カミテ)へ移動し、演奏が終わって降りてくるのを待つ。マスク入り封筒は本人が箱から取り出せば良い。これであれば家族にお願いしたことを、このマスクカーがやってくれる。係は二人必要だけれど…。

 果たして、当日。 紐の長さなど仕上げを、係が真剣に調整してくれている。そして客席前を行ったり来たりのテスト。
音もせず、変なコースに逸れることもなく、二台ともどうやら使えそう。あとは会場側へのお伺い。
 客席通路という場所は本来、モノを置いてはいけない。
あちこちの会ではわりとそれが無視されがちで、撮影の三脚など皆、悪気もなく立てている感じもするが、こういうルール、非常時の管理の為、ウルサイトコロハ、ウルサイ。
 そこでこれは、移動できる「屋台」や「キャンピングカー」の論理で考えることにし、正直に会場側にお願いした、というよりも「こうしますから」と伝えた感じ。

(『対策』ブログは次へとつづく)